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IPOを目指すスタートアップがシード期にやっておくべきバックオフィス構築の秘訣
IPOを目指すスタートアップがシード期にやっておくべきバックオフィス構築の秘訣

IPOを目指す企業にとって、避けては通れないのが、バックオフィスの構築です。一方で後手に回りがちなのも事実。本格的に準備に取り掛かったときに、「もう少し早く取り掛かっておけば、大幅な工数削減に繋がったのに」と悔やむケースは少なくありません。

本イベントでは、シード・アーリー期にこれだけはやっておくべきだというポイントや、バックオフィスの工数を最小化するための具体的なオペレーション・フローについて、バックオフィスの構築を経験してきたCFO、コンサル、ツールベンダー、VCそれぞれの立場からお話しします。


【登壇者プロフィール】(敬称略)

株式会社Aerial Partners 代表取締役 沼澤 健人 (ぬまさわ・けんと)
KPMG 有限責任あずさ監査法人退職後、エンタメアプリを提供するtaskey株式会社を創業(監査役現任)。会計・ファイナンス領域のコンサルティングファームである株式会社Atlas Accounting代表を務め、スタートアップから大規模まで幅広いサポート行う。2017年にAerial Partnersを創業。一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA) 税制検討部会長を歴任。


Kudan
株式会社 取締役CFO
Kudan Vision株式会社 代表取締役 飯塚 健 (いいづか・けん)
一橋大学卒業後、200512月、新日本監査法人(現、EY新日本有限責任監査法人)へ入所。201410月、マネージャーとなりITセクターを中心に未上場ベンチャーのIPO支援に従事。20156月に取締役CFOとしてKudanにジョインし、201812月に東証マザーズに上場。


株式会社Mer
Co-Founder & CEO ​澤口 友彰 (さわぐち・ともあき)
都内ベンチャー企業にて、法人向けソリューション事業の立ち上げ、サブスクリプション事業の拡大を担い、同社COOを務める。 現在は起業し、世界9.5万社以上で導入されているCRMプラットフォーム「pipedrive」の日本唯一のマスターパートナーとして、同製品の日本展開並びにセールステックを活用した営業業務の効率化・自動化・可視化の支援を行っている。


株式会社マネーフォワード
経理財務ERP本部 パートナーセールス ​古府 克章 (ふるこ・かつあき)
信用金庫での勤務を経て、2016年に、株式会社マネーフォワードの北海道支社立ち上げメンバーとして入社し、会計事務所や一般企業向けにマネーフォワード クラウドの営業活動を行う。 その後、カスタマーサクセスを経て、北海道支社長に就任。 20207月より、ジャフコ グループ株式会社へ出向。202012月より、現職。スタートアップや上場準備企業へのマネーフォワード クラウドの導入を促進すべく、IPOに関連した企業とのアライアンスを促進している。


ジャフコ グループ株式会社
ビジネスディベロップメント部 瀬戸山 広樹 (せとやま・ひろき)
200712月に新日本監査法人(現、EY新日本有限責任監査法人)へ入所。東京証券取引所の上場審査部に出向経験があり、EY新日本有限責任監査法人では、企業成長サポートセンター(IPO統括部署)で監査業務のみならずIPO業務に関する品質管理業務にも従事。202011月からジャフコ グループ株式会社にジョイン。


ジャフコ グループ株式会社
​ビジネスディベロップメント部 坂 祐太郎 (さか・ゆうたろう)
2012年、新卒で株式会社ジャフコ(現 ジャフコ グループ株式会社)入社。主な投資先はマネーフォワード、ChatworkWACUL、スマイループス等、DX領域への投資実績多数。Forbes JAPAN主催『日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング』2017年第2位。

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経験者が語るIPO準備、シード期にやっておくべきこと

瀬戸山 バックオフィス業務の工数削減に向けて、シード・アーリー期にやるべきことは、大きく2点に集約されます。一つは、現状をタイムリーに把握できるための仕組み作り。予実管理体制を作るということです。もう一つは、資金ショートを起こさず、かつキャッシュをどう使っていくか、実際どれくらい使っているのかを把握するための仕組み作り。つまり、資金管理体制を作るということです。

数字を見える化して把握することは、経営判断を早めることに繋がります。従業員がいない小規模組織の段階で実績数値集約の早期化ができれば、後々ボディブローのように効いてきます。これは、私自身、様々な企業のIPO業務に携わった中で実感しています。では具体的にはどんなソリューションがあるのか。株式会社Aerial Partnersの沼澤さんにお伺いできたらと思います。


沼澤 シード・アーリー期のスタートアップがバックオフィス構築にどう向き合うべきか。マインドと考え方のフレームの持ち帰っていただけるよう、「バックオフィス構築のしくじり先生にならないように」という観点でお話したいと思います。私は前職で会計・ファイナンス領域のコンサルティングファームで代表を務め、スタートアップから大規模企業まで幅広いサポートを行ってきました。現在Aerial Partnersはバックオフィスの専任担当ゼロでミドルステージへの組織拡大を進めており、どう業務構築をしているのか、前職の知見と合わせて紹介していきます。

今日お伝えしたいのは、

経営活動をドライブする強くて効率的なバックオフィスは、「システムの選定」ではなく「業務・データフローの設計」で実現する

ということです。

多くの企業を支援してきて感じる「しくじりを招く考え方」は2つあります。1つが「決算が締まればOK」というもの。シード・アーリー期に開発や顧客開発に重点が置かれるのは当然ですが、バックオフィスは期末に締まっていればOKという考え方は少し危険です。スタートアップの事業成長において、プロダクト開発や営業・マーケティング活動、採用強化のドライブは欠かせません。バックオフィスの価値は、これらの事業成長活動を支援する機能にあります。

ただ、技術革新が進み、外部環境やサービス成長の変化のスピードはバックオフィスが管理するスピードを上回っています。「管理体制が追い付いていない」という相談が非常に増えています。バックオフィスも他の領域と同じように、全体の業務フロー設計なしに個別業務を優先すると、あとから修復が難しくなります。APIの柔軟性を初期のタイミングでいかに整備していくかがスケールを決めるのです。

2つ目の避けたい考え方が「有能なSaaSを使えていればOK」というものです。例えば、数多くあるバックオフィス業務の中から、支払い管理の業務プロセスにだけフォーカスし、ペーパーレスを推進していったとします。個別プロセスの最適化は単独で見れば効率化は図れますが、業務全体設計は欠かせません。エクセルを使った再計算等の負荷の高い業務をいかにゼロに近づけるか。データフローの整備を進め、スケールするための活動に資源投資できるように、早い段階からバックオフィス構築の仕組みを入れることが重要です。

バックオフィス図1.jpg
瀬戸山 沼澤さんありがとうございます。Kudanで実際にバックオフィス体制を構築してきた飯塚さんにも、具体的な取り組みをお伺いできますでしょうか。


飯塚 私がKudanにジョインした2015年当時、管理体制はボロボロでした。研究開発企業だったこともあり、組織管理という概念がなかったんです。そこで、スモールなバックオフィスを目指し、技術開発をいかに邪魔せずに管理するかをミッションに動き始めました。シード・アーリー期に大事なのは、とにかくお金。売り上げ、資金調達をどうするかがどんな組織にとっても最重要課題だと思います。その前提に基づき、Kudanのスタンスは「余計なことを一切やらない」に尽きます。

IPO前提でやっておくべきこととして、Kudanがやったことは、

IPOの日付を具体的に決めて、それまでに何をすべきか逆算スケジュールを作ること
CFOがジョインするまでは、実績のあるコンサルタント等の外部人材に相談役をお願いし、管理コストを下げること
・財務、広報、総務全般をお願いできる"スーパー秘書"を採用したこと

マルチプレイヤーがいれば、Kudanのようなスモール組織はCFO2人でバックオフィス業務を押さえることができました。
では、具体的なIPO過程では何をやったのか。「やっておいてよかった」と思うのは次の内容です。

・議事録、稟議資料の全資料PDF
・稟議台帳(新規取引反社)の整理
・代表印捺印簿
・リモートワーク化に備えた打刻システム導入
・クラウド会計導入
・商標権の獲得
・社内ミーティングの効率化
・オープンなストックオプション、資本政策

社内ミーティングは廃止し、議論したいことがあれば随時Slackで解決するコミュニケーションを進めました。ミーティングで集まる機会がない代わりに、「毎週金曜午後は全員仕事を休んで昼から飲もう」と恒例行事を作り、そこでコミュニケーションをするようにしました。事業進捗やファイナンスの状況等を毎週共有できるようになり、社内ミーティングの時間削減に繋がっています。

IPO前、日本オフィスのメンバーは5人と少人数だったので、ストックオプションはオープンに配分していました。そうすることで、全社員一貫で、「Kudanのバリューを上げよう」という意識を共有できました。IPO後のバリエーションがどうなるのかを常に会話し、インセンティブプランをきちんと出すことで、持続的な成長組織に繋がると考えています。


具体的な事例で見る、バックオフィス工数を最小化するフローの作り方

 バックオフィスではできるだけ無駄なことしたくないのが企業の本音だと思います。これまでの話で、ここだけはやっておいた方がいい、というポイントはわかりました。では、シード・アーリー期には具体的にどんなオペレーションを組み、どんなシステムを使うべきなのか。ここからは、株式会社Merの澤口さん、株式会社マネーフォワードの古府さんと、フローの活用事例を考えていきたいと思います。

伝えたいポイントは2点。

・ツール利用でちょっとした仕組みを作ることで人月工数、費用をかけることなく構築できる
・途中で仕組み化するより、早いうちに仕組み化してしまった方が、工数が少なく済む

ということです。

IPO準備の中で、有価証券報告書作成はとても重いタスクです。だからこそ、それ以前に、月次決算を効率的に自社で締める体制を作っておくことが大事です。月次決算を自社で締めるとは、「売上を把握し、費用を把握しましょう」ということ。リアルタイムで収益費用を把握する仕組みを早い段階で作れば、その後の工数の大幅な削減に繋がります。


古府 まさにそうですね。将来使うことが予想されるツールは、早めに導入すべきだと思います。クラウドサービスの利用料は比較的安価で従量課金システムが多いため、小規模組織は導入のハードルが低い。人数が増えてから導入すると、データ移行も大変です。

社内コンセンサスをとるという意味でも仕組み化は早いタイミングが大事です。経費精算や勤怠システムの仕組みは、5人の会社に導入するのと、50人の会社に導入するのでは、関係者の数が違う。それだけ説明コストがかかります。仕組み化は、人数が増えてきたらチューニングする、変更を加えていくという考え方が合っていると思います。


 データが少ないうちに仕組み化しておくべきなのは、私も投資先で取締役をやった経験があり、痛感しました。データ移行は本当に大変ですよね。シード・アーリー期でどんなバックオフィス構築をしているのかは、2020年設立のMerさんの事例をぜひご紹介いただきたいです。


澤口 ありがとうございます。現在、バックオフィス専任の人材は一人もいないので私が担当していますが、かかる工数は月に1日以内におさめています。大切なのは売上と費用の把握で、入金・支払いの手続きがそれに関連して出てきます。特にフォーカスして話したいのが、費用の把握です。

費用は、通常、請求書が送られてきてから認識するものです。「これを支払わなくては」と認識し、請求書をまとめて会計事務所に送って決算で締めてもらう企業が多いと思います。でも、将来のスケールを考えると、請求書を見てからでは遅い。いつ何を払うのか、リアルタイムですべての費用を把握するのが重要です。

そこで、費用の把握では、支払いが発生予定のものは稟議を通すようにしています。クラウドサービスで経費申請用のフォーム(Typeform)を入力すると、SaaS同士を連携させるツールによってデータ転記が自動で行われます。タスク管理ツール(asana)にデータが飛んでくるので、内容を確認し、問題なければ承認済になり、ステータス変更が完了します。スプレッドシートはデータ記載用に活用しており、月々、何にいくらかかっているのかが見える化されています。

マネーフォワード クラウド経費は、売り上げ把握のインプットとして使い、会計ソフトまでデータ連携されています。これらはあくまでも当社の活用事例ですが、できるだけ二度手間なくデータ集積できるソフトを取り込むことが大事だと考えています。


古府 Merさんは現在、社員数9人ですが、50人体制になってもそのまま活用できる仕組み化が進んでいるなと感じます。


 そうですね。リアルタイムで収益、費用を把握できる組みを作ること、そして集金・支払いのフローも併せて効率化しておくことが、IPO準備時の「やっておいてよかった!」に繋がります。