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自らのアイデアを世の中を変えるビジネスに。ジャフコの起業支援プログラム 『First Leap』の成果と真相に迫る
自らのアイデアを世の中を変えるビジネスに。ジャフコの起業支援プログラム 『First Leap』の成果と真相に迫る

ジャフコのキャピタリストは、より多くの起業家の皆さんと出会い、選ばれ、ともに歩むチャンスを掴むために、ありとあらゆる方法を駆使しています。その中で、近年新たに挑戦している取り組みがEIR(客員起業家)制度です。海外VCが一昔前から取り組む本制度は、経済産業省による活用の実証事業が展開されるなど、国内のイノベーション創出を後押しすると期待される注目の取り組みです。

今回は、2022年の経済産業省 実証事業としてEIRの活用を開始したジャフコが、起業する前や起業して間もないステージの皆さんをEIRとして迎え、2023年に初開催した伴走型の起業支援プログラム『First Leap』第1期についてご紹介いたします。

『First Leap』の活動内容や成果、参加する事で得られる起業家の皆さんへの価値、第1期の参加者である3名の起業家インタビューの生の声を紹介しながら、ジャフコのEIRプログラムに対する取り組みやプログラムの魅力を深ぼっていきます。


ジャフコの起業支援プログラム『First Leap』とは? 

『First Leap』は、数多くの起業家の志にコミットしてきたジャフコが2022年よりスタートした起業支援プログラムです。起業する前や起業して間もないステージの方々を対象に、キャピタリストが伴走しサポートを行うことに加え、ジャフコが持つ起業支援の仕組みやノウハウを提供することで、起業の増加やオープンイノベーションの促進を図ることを目指しています。2022年まではキャピタリストが1対1で起業家に伴走するスタイルで取り組みを進めてきましたが、2023年からはプログラム形式での開催をスタート。

2023年に実施したプログラム形式の第1期では「ビジョンとチームビルディング」「ビジネスモデルと市場戦略」「資金調達と投資家対応」などのテーマで全6回のセッションを開催し、事業立ち上げに必要な知識・具体アクション・マインドセットを体感する場をご用意しました。また、様々な形でジャフコのキャピタリスト/投資先支援チームのサポートや、ジャフコ投資先CEOとの相談の場を提供しました。

・構想中の事業と近しい領域の投資先を担当するジャフコのキャピタリストとの壁打ち
・過去の投資先事例の知見共有
・ジャフコ投資先スタートアップCEOとのメンタリング
・想定初期顧客に対するニーズヒアリングや営業機会の提供
・事業の適法性に関して社内の管理部門(弁護士資格を有する担当者も在籍)との協議の機会

■『First Leap』から生まれた成果

キャピタリストの伴走中心で始まった2022年は9名の方が、本格的なプログラム形式を開始した2023年は15チームが参加しました。参加者は生成AI、SDGs、宇宙、メンタルヘルス、D2Cなどさまざまなテーマで起業をしています。
『First Leap』の強みは、経験豊富なキャピタリストによる伴走と、ジャフコの持つ広範なネットワークの活用が挙げられます。例えば事業構想段階では想定顧客に対するヒアリングや、セミナーの企画運営支援を行い、営業機会の創出を支援します。

実際に『First Leap』参加者の生成AI事業の立ち上げを目指す起業家が、ジャフコと共に開催したウェビナーでは500名を超える申込みがありました。加えて、約800社のリード創出を共同で行い、10社近くの成約に繋がっています。「立ち上げ段階だとリソースがなかったり、なかなか大手企業にアプローチ出来ないという悩みもあるので、とても助かっています」との声が寄せられました。


第1期参加者が語る『First Leap』の価値とは?

『First Leap』についてより良く知っていただくために、第1期 参加者の3名に「参加したきっかけ」「プログラムに期待していたこと」「事業や組織進化の参考になったこと」といったテーマで、『First Leap』の事務局メンバーであるジャフコ若林からインタビューをさせていただき、詳しく話を聞きました。

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『First Leap』参加者の近藤さん(写真左)、岸さん(写真中央)、盛本さん(写真右)

▼『First Leap』参加者

岸 尚希(きし なおき)
株式会社EQUES 代表取締役 CEO。東京大学松尾・岩澤研究室発となる数理系AIスタートアップであり、医薬品業界を中心に、検証から運用まで対応する伴走型のAIソリューション開発と、品質保証業務を効率化するAIプロダクトを開発中。また、言語・画像・3Dモデルに関する新たなAI技術の研究開発にも取り組んでいる。
(企業HP:https://www.eques.co.jp/

盛本 マリア(もりもと まりあ)
株式会社GFLOPS Founder CEO。グーグル合同会社を2024年1月退職後、自然言語のデータ分析、AI画像解析等を扱った事業開発経験を活かし起業。GFLOPSでは、大規模言語モデル(LLM)生成AI技術等を活用した、AIサービスの開発を目指す。特に、日々のデイリーワークをアシストしてくれるAIの活用に注力している。
(企業HP:https://www.gflops-ai.com/jp/home

近藤 奈央(こんどう なお)
すずな代表。アステラス製薬株式会社に8年間勤務し、2024年3月に退職。現在、インバウンド向けの高付加価値層をターゲットとしたメディカルツーリズム事業を地方にて展開準備中。日本の強みである医療を活かし日本各地を活気づける新産業として、医療コーディネーター業務に加え、メディカル・ヘルスケア領域と観光を融合させたコンテンツ開発へ取り組むことで、地方創生に貢献していく。
(企業HP:https://note.com/suzuna_2024/


▼司会進行

若林 正晃(わかばやし まさあき)
プロジェクト推進室 プリンシパル。東京大学大学院教育学研究科を修了後、Boston Consulting Groupに入社。その後、2022年にジャフコグループに入社し、戦略検討・ サステナビリティ強化・スタートアップエコシステムの拡大に従事。EIRプログラム『First Leap』の企画・運営メンバー。

■ 事業と組織を本気で考え抜く場に期待したこと

若林 最初に、皆さんが取り組まれている事業の概要と『First Leap』に参加した経緯について教えて下さい。

岸さん 株式会社EQUES 代表取締役 CEOの岸です。会社は3期目を迎えたAIスタートアップで、直近では医薬品業界を中心に、検証から運用まで対応する伴走型のAIソリューション開発と、品質保証業務を効率化するAIプロダクト開発を進めています。
『First Leap』参加のきっかけは、ジャフコ キャピタリスト 上原 晶さんからの紹介です。当時は受託開発がメインだったのですが、良いアイデアがあれば、パッケージ化したいと考えており、その一つに「製薬業界における品質保証」がありました。『First Leap』の講師の話を聞くことで、事業構想から事業立ち上げへと推進していけるのではないか、成長戦略とスケーリングが描けるのではないかと期待し、参加を決めました。

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盛本さん 株式会社GFLOPS Founder CEOの盛本です。『First Leap』のプログラムを通じて、2023年11月に会社を設立しました。事業としては「タスク指向」を重視した生成AIアシスタントサービスの開発を行っています。

当時、Google社員として勤務しながら裏側で共同創業の準備を進めていたのですが、「楽あれば苦あり」の起業において共に伴走できる共同創業者と、『First Leap』に一緒に参加して、最後までいい形で走りきれたら、共同で立ち上げようと考えていました。

若林 組織を組み上げていくための基準だったり、本当に一緒にやっていけるのかを見ていくプロセスにしたかったということですね。

_DSC2391.jpg『First Leap』の企画・運営を担当するジャフコ若林


盛本さん
 
そうですね。それからチームづくりだけでなく、事業づくりの見極めも期待していた部分です。生成AIに興味がある、共同創業者もいる、起業しようか...という状況だけではプロダクトとして上手くいかない可能性も高い。3ヶ月という時間をかけて議論していくことで、見えてくるものがあるだろうと感じていました。

近藤さん 私は日本の地方を元気にする新産業として、メディカルツーリズム事業をまさに立ち上げている段階です。様々な手段を検討しましたが、結果的にご縁があった事業会社の子会社として、関西からモデルケースをスタートさせ、このモデルを日本全国の地方各地に展開していきたいと考えています。

参加したきっかけは、ジャフコのキャピタリスト宮林 隆吉さんが講師をされているグロービスのMBA大学院の起業コミュニティで情報が回ってきたからでした。世の中にいろいろなアクセラレーターがある中で、50年以上の歴史を持ち、さまざまなスタートアップや中小企業への投資を数多く行ってきたジャフコは素直に信頼ができ、学びを得たいと思いました。

当時はこの事業計画でいいのか、資金調達含め本当にこのやり方でいいのかとすごく悩んでいる時期だったので、『First Leap』で事業立ち上げまでのプロセスを確かめたいと考えていました。


■ 最大の魅力は、過去の実体験を交えた講義と未来に活きる先人の言葉

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若林
 
続いて、実際に『First Leap』に参加してみて感じたメリットについても教えて下さい。事業や組織を進化させるために参考になったことは何でしたか?

盛本さん 各勉強会では起業家として活躍されている方が講師をしてくださるのですが、本当に素晴らしい講師陣だったなと思います。参加者の事業フェーズに合わせた、実践的かつ経験談を元にした講義が中心だったので、自分ゴトとして聞くことができました。例えば、チームビルディングのお話の中では、講師の方が「一緒にやりたいと思う人には、諦めずに誘い続けた。声をかけ続けることが大事。僕もやり続けていた」とおっしゃっていて、やっぱりそうなんだと改めて腹落ちしたことがありました。

岸さん 私も経験談を交えた勉強会の中で「会いたい顧客に、どこで出会うのか?」「どうやって会社の魅力をつたえるのか?」を具体的に教えていただいたことで、顧客へのアプローチ方法を意識的に考えるようになりました。そこからEXPOに出展しようと実際に動いて、結果リード獲得効率が上がってきました。具体的なアクションにまで繋げることができたのは、『First Leap』で得た学びのおかげだと思っています。

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近藤さん 私は質疑応答の時間も、非常にリアルなお答えばかりでタメになりました。勉強会で扱うテーマや課題が適切だったからこそ出てくる疑問や質問を、最後に解消できたと思います。講義内容を元に質問し、講師の方に直接フィードバックをいただき、後日再度SNSでメッセージを送って、更に壁打ちをさせていただいたりもしました。講師の皆さんも情熱を持って起業された方々だからだと思いますが、質問に対しても親身にアドバイスをくださいました。

盛本さん 講師の方の講義や、質問へのご回答で頂いた言葉が、後になって刺さることはたくさんありました。事業立ち上げに向けて走っている中で「『First Leap』で教えてもらったことは、こういう意味だったのか」とつながる場面が多くありましたよね。

あとは、ジャフコの顧客獲得支援の価値の大きさも感じました。私の会社はプログラム期間中に3回ウェビナーを開催させていただき、顧客紹介/ 集客をサポートしていただいたのですが、会社としての知名度が未だ高くない中、多くの方にお申し込みいただけたのは、本当にジャフコのおかげだと思います。

■ 参加後に見えてきた、確かな手ごたえ

若林 『First Leap』参加後、事業や組織の変化、見えてきた成果などがあれば教えて下さい。

岸さん 先ほどもお話しましたが、顧客獲得のアプローチ方法のヒントを頂いたことで、大手メーカーの企業様と、より上手に商談できるようになってきたと感じます。更には、受託から始まった品質保証を、他の会社からも開発依頼が来るようになってきた結果、受託からパッケージ化に移行できると確信を持てるようにもなりました。品質保証はニッチな領域である一方、業界内で広く使っていただけるものなので、ここからどう広げていくかが大事だと思っています。

『First Leap』で得た学びが起点となり、確実に前進している感覚があるので、これからも事業を着実に推し進めていきたいです。

近藤さん 私は『First Leap』の最終ピッチで「始めてみれば、ヒントが掴める」と言われ、その後参加したピッチコンテストでも審査員から「もうやっちゃえばいいじゃん、やってみなよ」と背中を押してもらい、まずはやってみようと思ったことが大きかったです。まずは自治体が主催するビジネスコンテストにどんどん参加し、どの地域で何が求められているのか、実際に探っていきました。

今はMBA卒業のタイミングで大手の製薬会社を辞め、4月から事業に100%コミットしています。ここまでスピード感もって進めることができたのは、やはり『First Leap』に参加したことで、事業の方向性を掴め、背中を押してもらえたからです。また、起業家の参加者同士のコミュニケーションの中から自分の強みを明確にでき事業の差別化ポイントの検討に繋がったこと、"やらないことは何か"が見極められた3ヵ月間でもあり、大きな収穫だったと思います。

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盛本さん 私も"絞る"という事の重要性に気づけました。プログラム参加時は、4つのプロジェクトを同時に動かしていたので日々ハードでしたし、生成AIの技術革新が絶えず起きる中、私たちもそれ以上のスピードで進化する必要がありました。そうした場面で『First Leap』に参加し、ジャフコが紹介してくれた事業者・機関の方々と対峙しながら、会社が進むべき方向性を決められたこと、事業を1つに定められたことは有難かったです。

更には、ジャフコの紹介で案件受注も実現しました。理化学研究所(以下、理研)様のスーパーコンピュータ「富岳」の利用に関する問い合わせに対して迅速かつ的確に回答する生成AIアシスタント「AskDona」を7月に導入開始しました。『First Leap』の顧客開拓支援の一環として、理研様と生成AIに関する技術意見交換が始まり、検証と評価の結果、導入ができたことは、膨大なデータから適切な回答を生成するAIの実用化へ向けた好事例となりました。

会社として良い流れが来ていると思いますが、きっかけの1つは間違いなく『First Leap』だと思います。今後は、生成AI技術をどのように使えばよいか悩む多くの企業にとって、架け橋になる存在を目指し、取り組んでいきたいと思います。

若林 皆さんがそれぞれに前進している様子を見て、我々としても開催して本当に良かったと感じました。今後の『FirstLeap』も、更に価値のある場にしていきたいと思います。

最後に、起業家の皆さんに向けたメッセージをお願いします!

岸さん 『First Leap』に参加する前は、どうしても直近の売上を立てることに目が向きがちで、事業や組織について腰を据えて考える機会がなかなかありませんでした。今は、講師やジャフコの方々と話した経験から、どのような会社にしたくて、そのために必要な組織は何かを考え、3-5年先を見据えた事業設計ができるようになったと考えています。

起業に本気で考え、悩み、動く、そのプロセスにジャフコが伴走してくれるのは、めったにないことだと思いますので、少しでもピンと来た方は、是非次回のチャンスを探し出し、自ら掴みにきていただきたいと思います。

盛本さん 起業は多くの場合、1人でゼロから始めることだと思います。ですが『First Leap』では、ジャフコのキャピタリストの皆さんが、これまでの投資経験をベースに、事業に必要なことを一緒に考え、悩み、手を動かしてくれる。すごく貴重な場だと思います。

同じ志を持った仲間がたくさんできるのも魅力です。学生起業家、既に起業した方、これから起業を考えている方...様々なステージの方がいることで得られる幅広い学びがあります。失敗も、成功も、情報共有する場が、事業の拡大スピードを早めてくれるはずです。

私は人生選択の1つとして、起業は前向きに選べる道だと思っています。次回プログラムが開催される際は、是非積極的にご参加いただきたいと思います。

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近藤さん 私にとって『First Leap』は良質で、リアルで、行動に繋がる情報が沢山得られる場でした。これまでの自分は、自分であらゆる情報をかき集め、分析し、考え、判断してきましたが、今回の講師・ジャフコの人々・参加者という多様で新しい繋がりから得たエッセンスが、事業成長に必要な行動選択を力強く後押ししてくれたと思います。

色々とやっているけれども、どの方向に進むべきか悩んでいる人、進むべき方向への歩き方がわからなくて困っている人にとって"道しるべ"となるはずです。そもそも上質な情報を知らなければ、上質な取捨選択はできません。何か足りないとはわかりつつも、それが何かわからない人にこそ、このような場でチャレンジする意味があると思います。

若林 皆さん、力強いメッセージをありがとうございました!皆さんのこれからのご活躍を心から楽しみにしています!


最後に

スタートアップエコシステムの担い手である起業家の皆さんを少しでも多く増やしていくという目的で開催された、起業支援プログラム『First Leap』第1期は「本気で起業したいから、万全の準備で臨みたい」「事業アイデアの仮説検証や、組織構築を高速で回したい」といった、起業を志し、悩みながらも、行動に移すことを決めた方や、既に動き出している方を後押しする機会となりました。

ジャフコでは今後も起業家の皆さんにとって、より良い場をつくるために、試行錯誤していきます。ジャフコのEIRプログラムに、そして新たな取り組みにご注目ください!

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2段目左から、ジャフコ 白川 亜祐旭大石 奈央上原 晶・若林 正晃
1段目左から、近藤さん、岸さん、盛本さん