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AIと専門家でつくるDX時代の会計事務所。バックオフィスの課題を解決し、企業活動を支えるインフラに
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起業を決めた背景や、事業が軌道に乗るまでの葛藤、事業を通じて実現したい想いを聞く「起業家の志」。
40回は、株式会社SoVa 代表取締役の山本健太郎氏に登場いただき、担当キャピタリスト棚橋昂大からの視点と共に、これからの事業の挑戦について話を伺いました。

【プロフィール】
株式会社SoVa 代表取締役 山本 健太郎(やまもと・けんたろう)
大学3年時に公認会計士試験に合格後、大手資格学校にて公認会計士講座の講師を務める。2016年大学卒業後、友人が設立した株式会社アオイエに入社。バスハウス事業の立ち上げなどを担い、その後取締役CFOに就任。バックオフィスやファイナンス業務を統括。2019年に株式会社アオイエ退任後、当社を設立。代表取締役CEOに就任。

What's 株式会社SoVa
税務・労務・登記などの役所手続きや経理業務について、「いつ、何を、どうすればいいか」がプロダクト上で調べられ、実際の書類ダウンロード等がワンストップで行えるサービス『SoVa」を展開。20236月には、書類自動作成機能をリリースし、役所への提出書類がプロダクト上で完全自動作成されるように。今後は、給与計算機能のアップデートや、自動仕分け機能のリリースを予定している。

portfolio


起業家と士業、双方の課題を解決する『SoVa

DX時代の会計事務所『SoVa』とはどんなサービスですか。

山本 税理士や社労士といった士業の方が担っている仕事に、AIのテクノロジーを掛け合わせた、新しい形の会計事務所です。「専門知識のアクセシビリティを高め、安心して挑戦できる社会をつくる」をミッションに掲げ、挑戦者である起業家や経営者の方の「そば」に寄り添うサービスを目指しています。
会社経営に関わるバックオフィス業務はとても煩雑。通常なら税務や経理は税理士、労務は社労士、登記は司法書士...とそれぞれの専門家に役所手続きをお願いしなくてはいけませんが、『SoVa』はひとつのシステム上で各手続きのやり方の確認や書類ダウンロードが行えて、料金プランも月額9,800円〜とリーズナブル。現在は創業期のスタートアップや飲食店・工場・農家等幅広い業種のお客様を中心に、約300社にご利用いただいています。

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山本 従来の『SoVa』は、カレンダー機能や通知機能、状況に応じた書類を提供するチャットボット機能等、「いつ何をしなければいけないのかがわかる」という機能がメインでしたが、20236月のアップデートでは書類の自動作成機能を追加。

これまでの『SoVa』を使用した役所手続きは、当社が作成したオリジナルの記載例を見ながらご自身で入力し書類を作成する形となっており、会社住所や代表取締役の氏名などの基本情報も手続きの度にご自身で入力する必要がありました。
今回新たに実現した書類の自動作成機能は、『SoVa』登録時に入力した基本情報を元に、それらが反映された手続き書類が自動でPDF作成される機能。手続きによっては新しく必要になる情報もありますが、一度『SoVa』に入力した情報は次回以降は自動で反映され、『SoVa』を使えば使うほど手続きがより楽になるという、「バーチャル会計事務所」である当社ならではの提供価値を体現した新機能になっています。

351809700_789745556193503_587405134539406682_n.png従業員入社の手続きの場合、このように「新たに入社する従業員の情報」を赤枠内に入力するだけで書類が完成。

山本 また8月には給与計算と記帳代行を行える新プランをリリース予定です。
さらに、給与計算と記帳代行を効率化する機能の独自開発を進めている他、中期的には、補助金や助成金に関わる支援や、税務サポートのメニューをさらにアップデートしていくことも計画しています。

ーユーザーの状況に応じて必要なサポートを提供するシステムを開発するのに、約2年かかったとお聞きしました。どんな点に苦労しましたか。

山本 例えば本社を移転する場合、どこへ引っ越したか、定款はどうなっているか、取締役会はあるか等によって、手続きが1,000パターンくらいあるんです。さらに書類の提出先も、法務局、税務署、年金事務所...と多岐にわたります。その他にも、新しい取締役が入ったり、従業員が入退社したり、手続きが必要な場面はたくさんありますから、全てを調べてデータベース化して開発して...とやっていたら2年が過ぎていました(笑)。
バックオフィス業務には、機械に任せたほうがミスなく迅速にできるものと、人にしかできないものが存在します。そこを一つひとつ見極め、システム上で提供できるサービス以外は専門家が対応する仕組みを取っていることも特徴です。

ーその地道な開発期間があったからこそ、参入障壁の高いサービスが完成したのですね。起業家の支援はもちろん、士業の業務負担軽減にも繋がりそうです。

山本 士業からしても『SoVa』は悲願のサービスなんです。例えば、日本の税理士は平均年齢が60歳を超えていて、税理士試験の受験者数もここ10年で半分に減っています。機械に任せられる業務は任せて、士業が本来専念すべき業務に専念できるようになれば、人手不足を解消できます。起業家の方にとっても、『SoVa』があることで事業に専念できるようになり、それはひいては社会に新たな価値を生み出すことに繋がる。起業家と士業、双方の課題を解決して社会を向上させていくことが、私たちの目指す未来です。

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ー山本さんが起業の道に進んだ経緯をお聞かせください。

山本 大学が商学部だったので、あまり深く考えずに公認会計士の勉強を始めて、3年のときに合格しました。やりたいことも決まっていない状態だったので、公認会計士の合格者の平均年齢である26歳までは「自由にやろう!」と思い、大学生活の傍ら資格取得予備校で講師の仕事を始めました。
起業を考え始めたのは、大学卒業後に講師をしながら、友人が経営するスタートアップのCFOを務めていたとき。当時、周りの起業家から経理や労務などバックオフィス業務の相談をよく受けていたのですが、そのうちの一人から「何度も相談するのが申し訳ない。バーチャル・ヤマケン(山本氏の愛称)がいたら楽なのに」と言われたんです。私自身、CFOとしてバックオフィス業務の煩雑さを日々痛感していたこともあり、それが事業化のアイデアに繋がりました。

ースタートアップ時代の経験が、起業後の自分に活きていると感じることはありますか。

山本 スタートアップ時代には現場を知る大切さを学びました。シェアハウスを運営する会社だったので、実際に物件を見て良し悪しを判断したり、壁紙を貼り替えたり、CFOでありながらも現場仕事をよくやっていたんです。SoVa創業期も、それぞれの業務を1回は自分でやってみて、その人が何を大事にして仕事をしているのかを理解してからメンバーとコミュニケーションを取るようにしていました。そこを理解していないと、伝え方が全く変わって相手を傷つけてしまうので、そのあたりは意識をしています。

投資家は、SoVaという船に一緒に乗ってくれる存在

_DSC2393.jpg山本氏とジャフコ担当キャピタリストの棚橋昂大(左)


20233月にジャフコのリード投資で、プレシリーズAラウンド・22,500万円の資金調達を実施されました。ジャフコとの出会いについてお聞かせください。

山本 『SoVa』の機能を拡充することで事業を一歩先へ推し進められるという勝ち筋が見えたので、2022年の秋ごろからピッチ大会に参加する等して、VCの方々とコミュニケーションを取り始めました。実は、棚橋さんから初めて連絡をいただいたのは、それよりも前の7月頃でした。ピッチ大会やインタビュー記事で私のことを知ってくださっていたようで、メッセンジャーでDMをいただいて面談したのですが、そのときは本格的な資金調達の話には至りませんでしたね。

棚橋 はい。でも、それ以降もSoVaのことはずっと気にかけていたんです。私は、学生時代のインターンや管理部門一筋だった母の話から、バックオフィスのペインを非常に強く感じていたので、その課題を解決できるサービスに興味を持っていました。特に『SoVa』のような、創業期に発生する様々なバックオフィス業務にきめ細かに対応した零細企業向けのサービスはなかなかなく、ニーズが高いと感じていました。
また、慶應卒で会計士というとそのまま会計士の道に進むのが一般的。その中で山本さんは、学生時代からスタートアップにジョインして、起業して、しかもプロダクト開発に2年もかけている。起業家としてのユニークさにも注目させていただいていました。

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ーそこからジャフコが投資家候補に挙がるまでには、どんな経緯があったのでしょう。

山本 今年の初めに再度連絡をいただき、藤井さん(パートナー藤井淳史)を交えて改めて面談をしました。そこから本格的に投資を検討していただけることになったんです。

棚橋 『SoVa』は単価が安く、初回面談の段階では機能も限られていたため、収益面で課題がありました。でも年明けの面談時には、書類の自動作成や給与計算機能、将来的な事業展開等のビジョンが明確化されていて、事業が一気に進展した印象を持ちました。

山本 そこからは怒涛のデューデリジェンス。資金調達のスケジュールがかなりタイトだったので、3日に2日のペースで密にやり取りしましたね。中でも、過去の仕訳帳を全部送ってくれと言われたのには驚きました。

棚橋 負担をおかけしてしまったかもしれませんが、決算書から遡って最も粒度が細かい生の数字というのが仕訳帳のデータ。お金の出入りを細かく見て、私たちで事業計画を描いた上でディスカッションをするというのが、ジャフコの基本のやり方です。

山本 すごいですね。藤井さんも「企業のすべての経済活動は仕訳帳と財務諸表に必ず表示される」と仰っていましたが、数字の裏にはいろんなストーリーが隠れていて、細かく見ていくと事業や組織の状況を深く理解することができる。藤井さんと棚橋さんは当社の数字の意味をきちんと理解してくれていて、会計士の目線から見てもびっくりしました。

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ー最終的にジャフコをリード投資家に選んだ決め手は何でしたか。

山本 私は、資金調達は採用と同じだと考えています。通常なら絶対採用できないスーパースター級の人が、資金を出してくれるだけではなくSoVaという船に一緒に乗ってくれる。だから、私たちの価値観に共感していただき、その上でいかに利益を出すかを議論できる方が理想でした。藤井さんは、常に「SoVaにとって何が良いか」を考え意見をくださる方。そういった点でも理想に合った方でした。
また、細かいところまでご自身でご覧になる方なので、起業家からすると答えるのが大変な鋭い質問もたくさんいただきましたが、私はむしろ「こだわっている部分だから話したいと思ってた!」と喜んだほど。当社のプロダクトへの向き合い方と通ずる部分が多く、そこも信頼感に繋がりましたね。

ー資金調達前と後でジャフコの印象は変わりましたか。

山本 調達前は、すごい企業にしか投資しない、ちょっと近寄りがたいイメージでした。いわばライオン(笑)。でも、実際は非常に細かく事業を見て評価してくれて、スタートアップの泥臭い部分にも共感してくれた。ご自身が同じように地道に投資活動をされているからこそなんでしょうね。

棚橋 投資先に入り込んで、営業も採用もバックオフィスも一緒にやって、次の調達も一緒に走っていく。ジャフコのそういう部分を評価してパートナーとして選んでいただけたことを、とても嬉しく思います。


日本最高かつ最大のプロフェッショナルファームをつくる

ー資金調達を完了し、今後どんなことに取り組んでいきますか。

山本 IPOまでに「日本最高かつ最大のプロフェッショナルファームをつくる」という目標を掲げています。まずは、従業員10名以下の小規模企業にとっての「最高の会計事務所」を目指し、最高品質のサービスを追求する。最高のサービスを実現できれば、それを多くの人に届けない理由はないので、徐々に対象企業を広げていく。現在、日本最大の会計事務所の顧客数が約12,000社なので、2028年までにその規模感まで拡大して「日本最高かつ最大」を達成したいと考えています。

ー山本さんが事業を通じて実現したい社会とは、どんな社会ですか。

山本 『SoVa』を通じて、事業に集中できる起業家や新たに起業する方を増やし、間接的に日本社会を向上させていきたいです。『SoVa』を使っていただくことで企業活動のデータがどんどん溜まっていくので、将来的には、企業のライフステージに合わせて必要なサービスを提供することも視野に入れています。
アリババ創業者のジャック・マー氏は、地方の飲食店にいるときに知らない人に声をかけられ、「あなたのサービスのおかげでうちの会社は大きくなりました」と感謝されて飲食代をご馳走になったと言います。当社もメンバー全員が一度はそういう体験をしたことがある、そんな未来を実現したいですね。

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ー最後に、山本さんが起業家として大切にしていることをお聞かせください。

山本 マネーフォワード代表の辻庸介さんに教えていただいた経営術ですが、経営を「ヒト」「モノ」「カネ」で捉え、一番ボトルネックになっている部分に突撃して解決していくのが経営者の仕事。中でも、「モノ」をつくる・売ることは他の役員陣が担当し、私は企業の存続に直結する「ヒト」「カネ」において責任を持つようにしています。メンバーの可能性を最大化できる環境や仕組みをつくる。どんな状況になっても倒産しないように4の矢くらいまで戦略を考えておく。そこは常に考えて実行しています。
マインド面で言うと、当社は創業当初から、すべての意思決定軸になるミッションやプリンシプル(SoVaのメンバーとして目指してほしい姿をまとめたもの)を掲げて、プリンシプルは年1回みんなで議論しながら改定しています。理念は企業にとっていわば扇の要。要が強固でなければ、組織は安定して広がりません。規模の小さいスタートアップこそ最初に策定しておくべき、企業を成長させる重要なポイントだと思っています。


担当者:棚橋昂大 からのコメント

棚橋さん.jpgあらゆる規模の事業者にとって、税務・労務・登記・経理等のバックオフィス業務にまつわる課題の深さは、言うに及ばずかと思います。近年では、様々なクラウドソフトの登場や行政のオンライン化により部分的に簡便化されてきた領域ではありますが、必要な業務全体を徹頭徹尾テクノロジーで解決するような事業者は登場してきませんでした。SoVaは、会計士等の専門家チームと最新テクノロジーを以って、前述の課題に対して真正面から取り組む会社です。日本に約370万社以上存在する企業の、事業活動を支えるインフラとなったその先には、さらなる事業拡張性があると考えています。この大きな取り組みにご一緒できることを大変嬉しく思います。全力で併走して参ります。