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投資先企業×ジャフコで新規事業を推進!ライフイズテック『DXレディネス研修』事業化事例
投資先企業×ジャフコで新規事業を推進!ライフイズテック『DXレディネス研修』事業化事例

ジャフコの役割は「投資」だけではありません。投資先企業の成長を実現するための様々な支援を行うBD(ビジネスディベロップメント)部では、主に「マーケティング・セールス」「HR」「バックオフィス」の3領域の支援を行っています。

今回ご紹介するのは、そのうちの「マーケティング・セールス」支援に関する事例。IT教育事業を展開するライフイズテック株式会社が企業向けに提供している全社員DX人材化研修プログラム『DXレディネス研修』の事業化にあたり、ジャフコBD部では、プログラム開発からブラッシュアップ、顧客開拓に至るまでのプロセスを企業と二人三脚で進めてきました。

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お話を伺ったのは、ライフイズテック株式会社 取締役副社長COOの小森勇太氏。ジャフコ投資担当の長岡達弥、BD支援担当の坂祐太郎(※坂は2022年6月よりパートナー就任)を交えた対談形式で、リアルな事業化ストーリーをお届けします。


【プロフィール】
ライフイズテック株式会社 取締役副社長COO 小森 勇太(こもり・ゆうた)
人材コンサルティング会社で「エンターテイメント×採用」新サービス開発に取り組む。独立後、株式会社SCRAPで『リアル脱出ゲーム』のコンテンツディレクターを経験し、ライフイズテック株式会社を共同創業。サービス、マーケティング、組織の最高執行責任者。一般財団法人生涯学習開発財団認定ワークショップデザイナー。


【What's ライフイズテック株式会社】
ライフイズテックは、2010年に「中高生ひとり一人の可能性を一人でも多く、最大限伸ばす」をミッションに創業したEdTech企業です。「2025年までに120万人のイノベーション人材育成」を目指し、全国500以上の自治体、2,650校の公立・私立学校、約50万人が利用する(*)中学・高校向けプログラミング学習用EdTech教材「Life is Tech ! Lesson」を提供するほか、延べ5.2万人以上が参加する国内最大規模のIT・プログラミングキャンプ&スクール「Life is Tech ! 」、企業向け、全社員のDX化を目指すデジタル人材研修「DXレディネス研修」等を運営しています。これまで中高生、大学生、社会人を一気通貫したデジタル・アントレプレナー教育を提供、今後もライフイズテックは自ら社会を変えるデジタル人材の育成を加速させてまいります。(*)=2022年7月時点
サービスサイト:https://life-is-tech.com


【事業立ち上げ】初の企業向けサービスを開発
ライフイズテック小森氏 × ジャフコ長岡

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ライフイズテック小森勇太氏(右)とジャフコ投資担当の長岡達弥(左


ー最初に、『DXレディネス研修』の概要を教えてください。

小森 「全社員DX人材化」を目指すための、企業向け、特にエンタープライズ向けの研修プログラムです。企業様が感じている課題として多いのが、ビジネスサイドの社員の方々へいかにDXを浸透させるか。弊社では理論系講座と実践系講座を掛け合わせ、デジタルに苦手意識のある方でも楽しみながら学習できるプログラムを提供しています。


ー事業立ち上げにあたり、まず相談したのがジャフコだったとお聞きしています。どんなことを相談されたのですか。

小森 弊社は創業以来、子ども向け、学校向け、自治体向けにIT教育サービスを提供してきました。企業や社会人に向けたサービスは初でしたので、企業は人材育成においてどんな課題を持っているのか、社会人に対してIT教育を行う場合どんなニーズがあるのか、企業のリアルな声を知りたくて担当キャピタリストの長岡さんに相談させていただきました。


長岡
 2020年の年末でしたね。急な相談で驚きましたが、繋がりのある大手企業数社にさっそくアポを取りました。ライフイズテックは「プログラミングを教える会社」ではなく「身の回りの課題を見つけて解決するためのITスキルを教える会社」。今回の新規事業のお話を聞いて、そのスタンスをより体現していきたいという熱量を感じました。


ーこれまで中高生向けに特化していた事業を、社会人向けに拡大しようと考えたのはなぜですか。

小森 創業当初は中高時代の6年間の教育にフォーカスすると決め、これまで11年にわたり延べ5万人以上の中高生を育ててきました。教育という領域はそれくらいの年月をかけて初めて本当の成果が出てくるもの。弊社でも、キャンプやスクールの卒業生が起業したり、初イグジットを果たしたりと成果が現れ始めています。ただ、彼らが就職を選ぶ場合、出口が非常に偏っていることに気づきました。日本には業界問わず優れた企業がたくさんあるはずなのに、大半が有名なテクノロジー系企業に集中していたのです。

卒業生にはもっと様々な企業でイノベーションを起こしてほしい。そのためには企業側のDXを加速させることが重要だと感じました。DXが浸透している企業は、データを活用する環境やデジタルに強い人材が揃っていることはもちろん、DXを運用し続けるためのアジャイル思考やダイバーシティを大事にしています。卒業生が「ここで活躍したい」と思えるような受け皿をもっと増やすためにも、従来こだわってきた中高時代の6年間というボーダーラインを取り払う決断をしました。

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ー大手企業と実際に話して、どんなニーズが浮上しましたか。

小森 DX人材の育成が重要なことは理解しているけれど、具体的にどう育てていけばいいのかという全体像を誰も描けていないことがわかりました。そこに対して弊社のアセットをどう使っていくか?という視点でプログラムを形作っていき、ある程度の形が見えてきた段階で長岡さんに「ジャフコさんの社内でも試してみてもらえないか」と相談したんです。


長岡 小森さんのキャッチアップ力の高さには驚かされました。数社訪問しただけでポイントを見極めてプログラムを作ってしまったんですから。ジャフコ社内で研修を実施したのは、最初に相談をいただいてからわずか1か月後、2021年1月中旬頃のこと。顧客開拓に向けて導入事例を作ることと、サービスのブラッシュアップが目的でした。私の所属している投資部や、BD部、管理部等、様々な部門からメンバーを集めて1日かけて実施したのですが、内容がすごく良く好評でした。単にデジタル化を学ぶのではなく、データの意味というところから理解できる構成になっていました。


小森 データというものはクラウド上にアップすることで真価が発揮されます。PCにあるだけではただの情報ですが、クラウドにあげることで皆が情報にアクセスできるようになる。DX育成が進まない大きな原因は、「なぜデジタルを使うべきなのか」「日々の業務でどう使うのか」が議論されていない点にあると考えています。世の中に"Why"が圧倒的に足りていないんです。弊社では、そこを考えて議論させることをずっとコアな事業にしてきましたから、対象が社会人になってもその部分は重視してプログラムを作りました。

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ージャフコ社内でのトライアルは、その後のブラッシュアップにどう活かされましたか。

小森 大きく変えたのは2点。まず、研修内でDXのためのアプリを作ってもらうのですが、当初は中高生向けと同様にプログラミングをベースに教えていました。ただ、社会人がプログラミングを習得するまでには時間がかかると実感したため、ノーコードツールを活用することにしました。もう1つは、アプリ開発前にフローチャートを書いてもらう流れにした点。アプリ開発そのものが目的ではなく、アプリでどんな課題をどう解決するのか、戦略を考える力を身につけてもらうことが真の目的だからです。トライアルを通じてサービスを試す機会をいただき、本当に良かったと思っています。皆さんのリアクションや感想を直に受けて、顧客をより深く知ることができました。


長岡 社内には「事業をゼロイチで作る体験ができるチャンスだよ」と言って声をかけたこともあり、顧客としてだけでなく、サービスの作り手、当事者として参加できたことがトライアルをするにあたって良い環境が作れたと思います。


【顧客開拓】集客セミナー・勉強会でのリード育成
ライフイズテック小森氏 × ジャフコ坂

_DSC6177.jpg小森氏(右)とジャフコBD支援担当の坂祐太郎(左)


ー坂さんのいるBD部では、トライアルの反応はいかがでしたか。

 僕の部署でも大きな成果がありました。先ほど小森さんが仰っていたように、DXはクラウド上にデータベースがあることが重要で、例えばExcel管理のままの時点でDXは進みません。初歩的なことですが、僕も社内で「スプレッドシートに変えましょう」と言い続けていましたが、「使いづらい」という声が多くてなかなか改善されなかった。でも、ライフイズテックさんの研修を受けて初めて、皆が僕の言っていたことを理解してくれたんです。今回のトライアルは、僕らが身をもって「DXとはこういうことである」と体感できた貴重な機会でした。

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ー坂さん自身も、DXに関して小森さんと同じ課題感を持っていたのですね。

 そうですね。僕も大手企業向けにDXのウェビナーを開催したりしていたので、小森さんとお話しして「同じことを考えている人がいる!」「しかもそれをサービスにしようとしている!」と嬉しく思いました。2021年はちょうどDXが盛んになった時期。世の中の課題感、テクノロジーの進化、すべてがぴったりと重なった、今だからできるベストなタイミングだったと思います。


小森 坂さんはとても柔軟性のある方。坂さんとともに顧客開拓を始めた当初、『DXレディネス研修』はサービスとしてまだ固まり切っていませんでしたが、そこも許容して一緒に作り上げていただきました。


ー顧客開拓はどのように進めていったのですか。

 まず、DXをテーマにした集客セミナーを開催しました。「DXとは?」「何のためにDXをするのか?」という前提部分から始め、「DXを成功させるには?」「DX人材を育成するには?」といった部分まで踏み込む構成です。目標参加人数100人以上のところ、120〜130人の方に参加していただきました。セミナー後、特に関心の高い参加者の方々を集め、1時間の少人数勉強会を実施。ここで『DXレディネス研修』導入への動機形成を図るという流れです。このアハ体験からクロージングまでのプロセスは小森さんが設計してくれたのですが、顧客開拓手法としてとても優れていたので、今では他社にもこのフォーマットを展開しています。


小森 この勉強会の後、実際に何社かお話に伺いました。あと、ジャフコさんでのトライアルの際に、研修の流れや実際に開発したアプリを紹介する動画を作らせてもらったのですが、提案する際にお客様に見せることで、イメージが湧きやすく、それも営業活動にすごく役立っています。

Life is Tech ! 「DX人材研修」プログラム例


ー企業への導入状況はいかがですか。

小森 おかげさまで非常に高評価をいただいています。サービス立ち上げ当初から企業内での全社展開を目指していましたが、それが実現し始めています。例えば株式会社丸井グループ様は、もともとリーダー層向けに実施する予定でしたが「役員もぜひ」というお話をいただき、社長を含む約20名に向けて実施しました。『DXレディネス研修』は思考法を学べる研修なので、デジタルが苦手な方にもデジタルで課題解決する必要性を理解いただき、現在は全社でDXに向けた改革を進めていただいています。また、経営層におけるDXの本質は「デジタルを使うこと」ではなく、意思決定に必要な「何が経営課題で、その解決のためにデジタルをどう使うか」という思考。それを学んでいただけたことで、経営層にも効果的なプログラムであることが実証できました。現在は他社の役員の方々にも展開を進めているところです。


 ある導入先企業では、『DXレディネス研修』が社長賞を獲ったんですよね。


小森 はい。人事部とライフイズテックの共同プロジェクトとして社長賞をいただきました。実際に企業への導入が進み、企業で実装した時に起こる化学反応を目の当たりにして、「僕らのサービスは研修という枠に収まらないのかもしれない」と改めて実感しました。デジタルが嫌いすぎて最初は話すら聞こうとしてくれなかった社員の方が、気づけばアプリ開発に夢中になって「楽しい」と口にする。僕らがやっているのは、人のマインドを変えることなんです。

2030年には、様々なものが自動最適化されて事務職や生産職が210 万人余剰し、技術革新をリードしビジネスに適用する専門技術職人材が170万人不足すると言われています。 IT職へ転換させる必要がありますが、今ある施策では対応し切れないでしょう。企業の人材育成は確率論で進めるケースが多く、育つ社員だけ育てて、そこから漏れる社員に関しては諦めている。経済合理性やロジックで考えるとコストやパワーがかかるので仕方ない部分はありますが、誰かがやらなければいけないんです。その点、弊社は「一人ひとりの可能性を一人でも多く最大限伸ばす」ということを創業以来やってきましたから、to Bになっても僕らならできると確信しています。

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ー立ち上げから1年以上経ち、現在はどのように営業を進めていますか。

小森 今後の営業施策についてはまさにジャフコさんに相談しようと思っていたところでした。最初の頃は企業の人事向けに営業していましたが、現在メインにしているのは経営企画やDX推進チーム。最近では、DX戦略を練った次のフェーズ、DX人材をどう育成するかというフェーズに入っている企業が多く、それらの部署にいる方のほうが課題を明確に持っているので、弊社のサービスがフィットするんです。まずはDX人材育成のトップ層とコンセンサスを取ることで、全社展開していただきやすくなると感じています。一方、経営企画やDX推進チームが人材育成のミッションを持っていないケースもあるため、人事部の方にも我々の価値をどう理解してもらうか、検討しているところです。


ー最後に、小森さんにとってジャフコはどんな存在か、今回の事業化を通じて感じた印象をお聞かせください。

小森 一緒に考えて一緒に動いてくれるパートナーですね。両方やってくれるパートナーの存在はとてもありがたいです。新規事業はやってみないとわからないことが多い。最初から完璧にプランニングするケースもありますが、僕らのスタイルはアジャイル型。大手企業のニーズを聞く機会、ジャフコさんの社内でサービスを試す機会、セミナーや勉強会でリードを育成する機会、長岡さんと坂さんに様々な機会を提供していただいたからこそ、サービス開発も顧客開拓もうまく回り始めました。弊社にとって初のto B事業を実現へ導いてくれたパートナーとして、今後も伴走してくださることを期待しています。