JAFCOの投資とは

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法人営業の無駄をなくしたい。 初回商談までの大幅時短で顧客接点を増やし、世の中の生産性を上げていく
法人営業の無駄をなくしたい。 初回商談までの大幅時短で顧客接点を増やし、世の中の生産性を上げていく

起業を決めた背景や、事業が軌道に乗るまでの葛藤、事業を通じて実現したい想いを聞く「起業家の志」。
24回は、9seconds株式会社CEOの渡邊将太氏に登場いただきました。担当キャピタリスト松本孝之からの視点と共に、これからの事業の挑戦について話を伺います。

【プロフィール】
9seconds株式会社CEO 渡邊将太(わたなべ・しょうた)
1990年生まれ栃木県出身。大学卒業後の2014年に新卒で株式会社NTTドコモに入社。法人営業に従事。その後、2016年にfreee株式会社に入社し、インサイドセールスやフィールドセールスを経験。シェアリングエコノミー系のスタートアップの人事責任者を経て、2019年にDropbox Japanに入社。20204月に9seconds株式会社を創業。

What's 9seconds株式会社】
B2B企業のWebサイトを閲覧している 見込み顧客 と インサイドセールス(法人営業) をワンクリックで即座に繋ぐクラウドサービスQuicker(クイッカー)」を開発・運営。従来の「問い合わせフォームに入力された見込み顧客の情報を確認し、電話でアプローチする」というセールス・マーケティング手法ではなく、自社サイトを閲覧している見込み顧客とワンクリックで即座に繋がれる、これまでに無いスムーズな「お問い合わせ」の体験を提供。初回商談やヒアリングまでのリードタイム削減により、法人営業活動の効率化につなげている。

20211227日にジャフコをリードインベスターに3.2億円の資金調達を実施。

Portfolio


法人営業の非効率性に、日本社会の課題を感じた

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―20204月に9seconds株式会社を創業されました。起業の経緯と、課題感を教えてください。

渡邊 新卒で入社したNTTドコモやfreee、Dropbox Japanでエンタープライズ営業やインサイドセールスを経験しました。そこで抱いた違和感が、現在の「Quicker(クイッカー)」の開発につながっています。

ある会社では、顧客リストに書かれた電話番号に上から下まで、順番に電話をかけていました。毎日150の電話をかけ、そのうちアポイントがとれるのは数件です。1日の大半が"電話をかけて断られる"ことに割かれている。かける方もかけられる方も、決していい気持ちはしないのに、「自分はなぜ、これをやっているんだろう」という疑問が拭えませんでした。

法人営業の本質である、お客様との商談の時間や信頼関係を築いていくやりとり、提案を考え受注に至るプロセス等はとても楽しいです。でも商談にたどり着くまでの工程は、今だに効率が悪すぎるし、心理的な負担が大きい。もっと自動化、効率化できるんじゃないかと、国内を見渡しましたがその課題に徹底的にフォーカスして取り組み、この大きな課題を解いているプロダクトがなかった。自分が創るしかないと考えました。

―freee株式会社への転職や、スタートアップでの人事業務経験等キャリアを積まれています。起業にどう結びついていきましたか。

渡邊 転職時には「法人営業の組織が先進的である」という軸で転職活動をしました。freeeを選んだ理由は、早期から当時は珍しかったインサイドセールスを立ち上げ、インサイドセールスのミッションをきちんと定義づけていたりSalesforceを取り入れ、営業活動を定量的に細かく可視化していたり、セールスイネーブルメントの組織が立ち上がっていたりと明らかに日本トップクラスでしたし、中小企業や個人事業主等、国内のスモールビジネス に向けて設計されたプロダクトにも興味がありました。そして、営業担当者としてfreeeの主な顧客である「経営者」との対話を通じて、「日本には経営者、素晴らしい会社がもっと増えていくべきだ」という想いが強まり、自分もその一端を担いたいと考えたことで、起業への想いが明確になりましたね。

その後は、起業には人集め、組織づくりが大事だと考えていたためスタートアップの人事責任者を経験して、日本の5年先を走る米国のセールスオペレーションを学ぼうDropbox Japanを経て、起業に至ります。

起業に向けて、アウトバウンド営業からインサイドセールス、人事まで、必要な領域を経験されてきたんですね。起業のタイミングを決めたきっかけは何でしたか。

渡邊 2019に、アクセラレーションプログラム(スタートアップの事業育成・創出を支援するプログラム)に参加したことでした。

23か月かけて事業をブラッシュアップさせていく機会があり、そこでリサーチをしていく中で、セールステック領域は、日本と海外とで大きな差があると気づいたんです。海外には何ものプロダクトがあるけれど、日本には数えられる程しかなかった。労働人口が減り法人営業も減っていく中で、法人営業の効率化は大きな意義があるし、事業の可能性があると考えました。

インバウンドマーケティングでは、問い合わせが来たお客様と話ができるまでに42時間かかるというデータがあります。これは、アメリカのCRM会社であるHubSpot(ハブスポット)が調査して出した数字です。つまり、"興味を持っていただいたお客様に電話をかけたりメールしたりしてインサイドセールスがお客様と会話をするまでに"42時間"。社会的損失は甚大です。

法人営業やインサイドセールスとして重要なのは、お客様と会話をして理想やあるべき姿を聞き、その企業の事業成功に向けて一緒にソリューションを考えることです。それが本来の仕事なのに、2日がほぼ無駄になっている。「仕方がない」と「そういうものだ」と前例を踏襲する世界観はおかしいし、変えることでインサイドセールスや法人営業の仕事は絶対により良くなります。

もしこの理想を実現できたら、新卒で入った優秀な人材が、テレアポで鬱々としていく事態をなくすことができるし、法人営業やインサイドセールスのイメージが変わることで社会全体の生産性は大きく上がっていくと確信しました。


プロダクト構想段階から壁打ちをしていた

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渡邊氏とジャフコ担当キャピタリストの松本 孝之(左)

―202112月末にジャフコから資金調達を実施しました。起業段階からの資金調達への考え方や、ジャフコとの出会いについて、渡邊様と担当キャピタリストそれぞれの視点から教えてください。

渡邊 スピード感をもって510年と会社を大きくしていこうと考えていたので、最初から資金調達ありきで起業しました。
ジャフコさんとは、担当キャピタリストの松本さんと20208月にオンラインで初めて話をしました。当初は「国内最も大きく、歴史や実績のあるVCから出資いただけたらいいなぁ」と思いつつも、それが現実になるとは思っていませんでした。

松本 私は日本でまだ非効率的な部分が多く・デジタル化されれば効率化されるような領域に興味を持っており、その中でも特に、法人営業効率の悪さにはずっと課題を感じていました。コロナ禍でオンラインとオフラインが寸断され、顧客獲得はより非効率になっている。渡邊さんの事業構想を聞き、ぜひ賭けてみたいと思いました。

実際に、当時マッキンゼーやボストンコンサルティングが出したレポートでは、2025年に向けて「カンバセーショナルマーケティング」が伸びると報告されていました。B2BのWebサイトをインタラクティブな顧客獲得のツールとして捉える企業や、そうしたプロダクトが伸びていく、と。日本でこの領域は遅れており、問い合わせを待つ受け身の状況から脱していなかった。まさにここにビジネスチャンスがあると考えていました

具体的な資金調達実施までは、どんなやりとりがありましたか。

松本 初回ミーティングは、プロダクトが構想段階でした。そこで、「僕だったらこういうプロダクトがほしいな」「こんな機能の可能性はどうですか」等と話していましたね。

渡邊 そうですね。松本さんは、いろんなB2B企業の投資先を見てきた方。松本さんから、「支援先のインサイドセールスは今ここが困っている」といった課題感を共有してもらったり、事業可能性について意見をいただけたのは、とても勉強になりました。

松本 資金調達具体的に動き出したのは、202110月に渡邊さんが「インキュベイトキャンプ」に参加してからでした。総合2位と高く評価されたこともありましたが、「Quicker(クイッカー)」のβ版ですでに導入先があったことや、エンジニアチームの形が見えてきたことが大きかったです。

エンジニアで、現・取締役CPOの宇田川嵩史さんが20214月に入社されていて、お話させていただいたときに「渡邊さんといいチームができそうだな」と思ったんです。

渡邊 いよいよ次のラウンドの調達をしようと思ったときに、松本さんがそれまでも継続的に付き合いのあるVCでしたし、プロダクトへの可能性も感じてくれていた。ぜひ松本さんとご一緒したいのというのは、前から思っていたので、インキュベイトキャンプ後に具体的な話を進めていきました。

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数あるVCの中で、ジャフコを選んだ理由は何でしたか。

渡邊 決め手はつで、一つは信頼できる松本さんとご一緒できるところ。もう一つが、ジャフコが持つ圧倒的な資金力や強固なネットワークです。既存の投資先を(営業先として)ご紹介いただけるところも大きなメリットだなと思いました。最後に実績です。ビズリーチやマネーフォワードのリード投資家として生み出した再現性のある実績は大変魅力的でした。

松本さんには常に親身になって相談に乗っていただきましたし、この方となら10年やっていける、という直感があった。お互いにサッカーに本気で取り組んできたバックグラウンド等共感できるところも多かったですね。

松本 私は、「一番に相談されるパートナーでありたい」と考えています。事業については、渡邊さんの方が専門家です。そこは全面的な信頼をおいて、渡邊さんの実現したい世界を最短最速で行くためにはどういう道があるのか。そこをディスカッションし、後押しするのが僕の役割だと思っています。シード期の経営者は、すべて自分で判断して、実行までやらないといけない。案外、事業構築とは関係ないところに思考と時間が取られてしまう。なので、どんなことでも、気軽に相談してもらえるように心掛けています。


渡邊 そうなんです。今も週に1回はメッセンジャー等でやりとりして、日常の細かな相談をしています。このような形で気軽に話せる関係性は、なかなかないなと思っています。僕がやりたいと言ったことを否定せずに、まずは飲み込んでいただけるのも大きいです。その上でアドバイスをしてくれるので、安心して意見を言えるんです。


シードアーリー期だからこそ、業務サポートが心強い

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投資実行前と後とで、関係性の変化はありましたか。

松本 どの投資先でもそうですが、投資前はお互いに探り探りで。着金までの交渉が続いている状態は、信頼関係はありつつも緊張関係でもあります。こちらが株主になってからは、対等なパートナーとして、心理的安心感を得てコミュニケーションをとれるようになっていると思います。

渡邊 確かにそうかもしれませんね。
松本さんは、投資前も後もあまり厳しいことはいわず「こちら側から見れば、こうした方がいいのでは」と、あくまでも課題解決に向けての指摘をいただけます。起業からここまでは、自分で事業を作っていく"楽しさ"が勝っていましたが、これからは事業拡大に向けてしんどい側面が出てくるかもしれない。これからも密に相談し合えるパートナーでいてほしいですね。

投資実行後の今、ジャフコからはどのようなサポートを受けていますか。

渡邊 9secondsには、まだ専任でコーポレートを担当するスタッフがいません。事業に集中できるように、採用や経理、事業計画等の業務は、ジャフコさんから手厚くサポートいただいています。具体的には、採用後の社会保険整備等、社労士さんとのやり取りを進めていただいたり、採用媒体とのミーティングに出て人材要件を定めたりとです。

松本 今後は営業支援にも力を入れていきたいですね。

渡邊 VCがここまでやってくれるとは思っていませんでした。ほとんどのスタートアップは人が足りず、本来はお客様の課題解決のために考えて動くべき時間を、管理業務に割かなくてはいけません。そこに、1メンバーとして手を動かしてくれる方がいるというのは本当に心強い。シードアーリー期にジャフコさんに入っていただけた、大きな価値だと思っています。


どんなお客様の課題に向き合っていくのか。課題解決の軸はぶらさない

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今後、事業拡大に向けて、実現したいことはなんですか。

渡邊 見込み顧客とインサイドセールスや法人営業担当者の初回の接点に関する大きな課題を解くことにまずは集中したいと思います。その後はその周辺領域のプロダクトの構想は既にあるので、タイミングを見て新たなプロダクトをリリースしていきたいです。松本さんには、どう事業展開していくか、また壁打ち相手になっていただきながら、知見をいただきたいです。

またそれを実現するにあたって、直近の課題はエンジニア採用です。エンジニアにとって営業の業務課題はとっつきにくいかもしれませんが、日本において、セールステックのマーケットはこれから先、非常に大きなマーケットになります。我々はその代表的な企業になっていきたいので、一緒に目指してくださる仲間をどんどん増やしていきたいです。

最後に、渡邊さんが起業家として大事にしている想い、志について教えてください。

渡邊 大切にしているのは、「誰の課題を解決しているのか」という視点です。
Quicker(クイッカー)」であれば、非効率なテレアポに疑問を抱苦しい思いをしているかつての自分のような若手に、インサイドセールスや法人営業の楽しさを感じ、本質的な活動に集中してやりがいを感じてもらいたい。そして、そういった方々の生産性を上げて、社会を健全にしていきたい。その軸をぶれずに持つことが、起業家としての責務だと思っています。


担当者:松本孝之 からのコメント

松本様_プロフィール.jpg渡邊さんは、セールス領域の最先端企業で経験を積み、ご自身の具体的な課題感から事業を立ち上げています。インサイドセールスを経験した起業家は国内でも非常に珍しく、日本で一番課題を知っている人にかけてみたいと考えました。

今まで経験してきたインサイドセールスの負の部分、日本の遅れている部分に光を当て、インサイドセールスの質の向上、効率化を多くの企業に提供していってほしい。そして、いずれはセールステックの分野でナンバーワンを目指してほしいと思います。20204月の創業はコロナ禍と重なり不安も大きかったと思います。しかし奇しくも、セールステック領域はコロナを契機に急伸しました。多くの人が"無駄だったことに気付いた"世の流れを追い風に、これからの躍進を期待しています。