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バーチャルライブで世界を変える  日本発の総合エンタメプラットフォーム
バーチャルライブで世界を変える 日本発の総合エンタメプラットフォーム

起業を決めた背景や、事業が軌道に乗るまでの葛藤、事業を通じて実現したい想いを聞く「起業家の志」。第11回は、株式会社VARK 代表取締役 加藤卓也氏にお話を伺いました。


【プロフィール】
株式会社VARK 代表取締役 加藤 卓也(かとう・たくや)
1991年生まれ。新卒で株式会社カプコンに入社。某人気ゲームタイトルシリーズの新規事業企画等を担当。またVRタイトル開発の立ち上げにも携わる。その後独立し、株式会社VARKを設立。2021年4月、Forbes Asiaによる『Forbes 30 Under 30 Asia 2021』(※)の「Consumer Technology」部門にて選出される。

(※)毎年Forbes誌がアジア太平洋地域の23の国と地域を対象とした各分野で活躍する30歳未満の人材を選出する企画)


【What's 株式会社VARK】
20178月に創業。「新しい活躍の場所を創り、新しい人生を届ける。」というミッションのもと2018年末よりバーチャル(VR)空間でライブイベントを楽しめるプラットフォーム「VARK」の開発・運営を手掛ける。2019年の夏にはフェスイベント「Vサマ!」を主催し、twitterトレンド1位を獲得するほど話題となる。2020年には新型コロナウイルスによる延期、中止の影響も受けつつもライブイベントを多く開催し、秋頃からは大手VTuber企業とのシリーズライブを開催。VARKへの来場者数は前年比4倍にまで成長した。20215月に約6億円の資金調達を実施。

Portfolio

世界を変える新しい技術は何か。VRなら勝負できると思った!

―26歳で起業され、2018年よりバーチャルライブプラットフォーム「VARK」のサービスをスタートされています。起業家になりたいという想いはあったのでしょうか。

いえ、1ミリもありませんでした(笑)。もともとは体育会系学生で、中学高校では卓球で日本一を目指していました。ですが、県大会のレベルでも中国から来た留学生がたくさんいて、彼らにはどうしても勝てなかったこともあり、大学ではよりスポーツ人口の少ないマイナースポーツで世界一を取ろうと、スポーツチャンバラを始めました。なんとなく「世界一の景色を見てみたいな」と思っていたんです(笑)。4年後にアジア1位までたどり着きましたが、世界大会で敗退。でもそこで、「世界一になったとしても、世界の景色は変わらない」と気づいたんです。社会に対して良いことをしているわけでもないし、自己満足だな...と。じゃあ次は、世界を変えるようなサービスに携わり、社会に影響を与えようと就職活動を始めました。

大学生の時に、LINEやパズドラ(パズル&ドラゴン)がリリースされ、1年足らずで世界中に広がっていったタイミングでした。そこに世界を目指すチャンスがあると思ったんでカプコンにいた4年間で、ソーシャルゲームは時代遅れになっていきました。


「世界を目指す」想いは一貫していますね。世界というゴールから逆算する思考法はどこから来ているのでしょう。

日本だけが変わるというのを、生まれながらにしてあまり体感したことがなかったからです。日本だけ特殊なサービスができる時代ではなく、変わるときは世界からガラッと変わっていく。FacebookLINEによって、日本だけでなく世界のコミュニケーションスタイルも一変しましたよね。そういう時代なので、何かを変えようとしたら世界ごと変えないといけないと考えていました。

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新卒でゲーム会社・カプコンに行ったのはなぜでしたか。

本当はWebサービスを手掛けたかったのですが。大卒1年目からものづくりを教えてくれる会社はなかなかなかった。当時盛り上がっていたソーシャルゲームなら開発経験が積めると、入社を決めました。


そこから、起業してVRの領域に行こうと考えたきっかけとは?

「新しくできたものが世界中に広がったときに、世界は変わる」と思っていたので、ゲームではない、これから世界を変える可能性のある技術に携わりたかった。調べるうちに行きついたのがVRでした。

VARKを創業した2017年は、VR元年()と言われた2016年にいろいろな会社が事業に挑戦して失敗し、市場での需要が落ち込んだタイミングでした。失敗事例を細かく見ていくと、ユーザーから支持されないようなレベルの低いプロダクトばかり。一方、自分には4年間のゲーム開発で培ったプロのクオリティを打ち出す力がありました。そこでVR界なら勝てるのではないかと考えました。

)一般の消費者向けのVRヘッドマウントディスプレイが一斉に発売され、市場に出回り始めた時期


多くの企業が失敗したタイミングからの参入ですが、ここからVR業界は盛り上がるという予測があったのでしょうか。

VRが間違いなく来るかは、正直わかりませんでした。当時、VRヘッドマウントディスプレイだけで10万円くらいしましたから。ただ、確信していたのは、ソーシャルゲームを始め、ゲーム体験は終わりを告げているなということ。クリエイター側が飽き始めている様子を見て、「ユーザーは2~3年遅れで飽きてくる」と見ていました。他のエンターテインメント領域に移っていくだろうと考えたとき、VRは一つの選択肢になると思いました。

起業したい!と意気込んでいたわけでもなく、VRに投資する企業が増えているのを見て、じゃあやってみるかと人を巻き込んで動き始めた感じですね。


―2018
年にバーチャルライブプラットフォーム「VARK」のサービスを開始します。ライブや音楽にフォーカスした理由とは?

当時、一気に増え始めたVTuberさんの活躍の場として、音楽ライブ空間にはニーズがあると考えたからです。

2017年末ごろから、バーチャルのタレントやアーティストの方々がたくさん世の中に出てきて、VTuberバブルとも言われるタイミングがきました。創業当時、多くのスタートアップが入るシェアオフィスにいたのですが、周りの会社がどんどんVTuberさんのマネジメントを始めていた。でも、始めてみたもののどう活躍させるべきか頭を抱えていました。

バーチャルアーティストさんと話をしていても、「何をしたら人気が出るのか分からない」「なかなか稼げない」「目標をどう定めればいいか分からない」と口にします。これだけ多くのアーティストさんが悩んでいるのなら、彼らが活躍できる場所を用意すべきなのではないかと、VARKの構想が生まれました。音楽ライブは観客動員によりお金を稼げるもっとも分かりやすい方法ですし、バーチャル空間でも「武道館を目指す」かのような、明確な目標ができたらいい。「VARK」でバーチャルライブの機会を広げ、多くのアーティストさんが目指す"夢の舞台"にしたいと考えました。


バーチャルライブプラットフォーム事業の手応えを感じた出来事について、教えてください。

2018年12月の最初のライブと、2019年に開催した夏フェスで、お客様の反応に驚きました。

初回ライブは、サーバーの問題もありお客様を数百人しかお呼びできなかったのですが、チケットは即完売になり、ライブ後のネットの書き込み数と熱量がすさまじかった。観客は数百人しかいなかったはずなのに、それを遥かに上回る書き込み量でした。バーチャルライブがこれほど強烈な感動体験を与え、その感動がファンの皆さんの力で拡散されるものなのだと、確信した瞬間でした。

夏フェスでは15人のVTuberさんを呼び、有料チケットの売上は数千万円になりました。リアルのフェスと同じようにお金をかけて見に来てくださり、最初のライブの熱量を維持したままより大きくなっている手応えがありました。

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バーチャル空間で"熱量"を生むために、VARKならではの工夫があるのでしょうか。

バーチャルイベントは、リアルの熱量を再現しきれず「つまらなかった」となるケースが多い。そこで、例えば観客500人がペンライトを振ったら、バーチャル上でも観客席で振っているように見える仕組みや、それがアーティストさんにも伝わる仕組みを導入。また、アーティストさんが自分の目の前に来てくれたり、その熱量を間近に感じられたりと、バーチャルだからできる演出設計にもこだわりました。

実際に熱量が伝わったのかは、ネットの書き込み量や内容を確認します。「この良さをみんなに発信したい」という状況まで繋がったかどうかを、大事な指標として見ています。



VR
マーケットを俯瞰で語れる、信頼感があった

起業家として苦労されたこと、ぶつかった壁は何でしたか。

資金調達と仲間集めは本当に大変でした。

ただ、創業した2017年はVR元年が終わって冬の時代に突入していましたし、次はARだと言われていた。当時のマーケット感で投資家に理解されないのは当たり前でした。開発費を何とか捻出すべくチームのみんなには苦労をかけましたが、いつか流れが来たときにコインが裏返るだろう。そのときまで何とか生き延びようという気持ちでしたね。


―2021
5月にジャフコより約6億円の資金調達を実施されています。ジャフコとの出会いのきっかけとは?

最初に投資を受けた投資会社gumiさんの繋がりでした。ジャフコさんには、投資先企業にハンズオンして起業家とともに歩む...というイメージがあり、投資担当の長島さんはまさにそのタイプだなと思いました。


ジャフコからの資金調達を決めた理由は何でしたか。

資金調達を決める過程では、既存株主との話し合いを重ねました。いくつか選択肢がある中で、ジャフコさんを取るべきだという意見が圧倒的に多かった。ブランド力の強さを感じました。

ジャフコさんが投資したら何としてでも上場させるという、強いバックアップ力があることも、これまでの歴史から分かっていました。長島さんに2019年からずっとVRマーケットを見てもらっていて、信頼感もありましたね。


信頼関係とはどんなところで感じていますか。

長島さんは、VRの他の会社さんも見ながらマーケット全体を捉えてくれています。

2017年は谷底のような時期で、18年に一瞬上向きになり、19年にはオキュラスクエスト(Oculus Quest)の盛り上がりがすごかった...と、様々な転換点を理解しています。「あの時期にこれくらい売れた。今回の盛り上がりではこれくらい売上が伸びる」といったコミュニケーションが取りやすいのは、ありがたいです。

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2021
年はリアルとバーチャルのハイブリッドが進む転換点になる

―2020年はコロナの影響で市場にも大きな変化があったのでは。今後の市場はどうなっていくと考えますか。

VRは非常に読みやすいマーケットで、どの企業がハードウェアをどれくらいの台数を販売するかで、売上を大まかに計算できます。ただ、コロナの影響だけは読めなかった。バーチャルライブの認知度は上がり、売上は前年比4~6倍になっています。

バーチャルライブはこれからも引き続き伸び続けると思います。

もともとバーチャルライブを必要とするアーティストさんに加え、コロナを機にバーチャルライブが選択肢に入ってきた方が多くいらっしゃいます。VTuberさんに限らず、これまでリアルなライブ公演をしていたアーティストさんが、内容によっては「バーチャルライブが合いそう」と参画してくる可能性も十分あるでしょう。バーチャルかリアルかは表現方法の幅の一つでしかない。ファンの方にとってどういうコミュニケーションが適切か、アーティストさんが判断することになるでしょう。

コロナの収束とともにすべてがリアルに戻るかといえばそんなことはない。これからはリアルとバーチャルがハイブリッドで続いていくと考えています。


資金調達を実施した今、これからはどう事業を展開させていきますか。

これからVARKが手がけるのは、ライブの事業とバーチャル SNS の事業の二つです。

ライブの事業では、これまでバーチャルタレントやVTuber の方々に出演いただいていましたが、コロナを機にリアルで活躍されているアーティストさんからもお問い合わせをいただくようになりました。リアルとバーチャルの垣根を超えるティッピングポイントになるのが2021年だと思うので、ぜひ注目してほしいですね。

バーチャルSNSにおいても、2021年はユーザー層が大きく変わるだろうと考えています。メタバース()やバーチャルライブを楽しむのは、一部のオタク層だったのが、これからは誰も普通にバーチャル空間に遊びに来る世界がくるでしょう。

)インターネット上に構築される仮想空間。もう一つの自分の世界、活動場所を示す。多人数が参加可能で、参加者はアバターを操作してその中で自由に行動できる。

これまでの「VARK」が東京ドームだったとしたら、今後は東京ドームシティを作りたいと考えています。バーチャル空間にライブに行くだけではなく、ライブの前に遊んだり買い物をしたりする場があり、ライブ後には感想を語るカフェや飲食店がある。そんな「総合エンターテインメントプラットフォーム」を目指します。

普段、学校や仕事に行き、友人とおしゃべりするような日常の中に「ライブに行く」というイベントがあります。VARKというバーチャル空間の中にも遊ぶ場所、話す場所が存在し、その日常の一部としてバーチャルライブがある。そういった「バーチャルが日常になる」という未来を目指したいですね。

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―3年後、5年後、10年後と未来を描いたとき、VARKはバーチャルな世界とどのように関わっていきたいと思いますか。

「メタバース」は今後必ず広がっていくと思います。

その中でVARKは、バーチャルの新しい場所に対して、一人ひとりが最も活躍できる場所を提供できるチームであり、会社でありたいと思っています。音楽ライブ以外にも、もっと違う活躍の仕方があるかもしれない。メタバースという"もうひとつの世界"で、リアルの世界とはまったく異なる才能を発揮する人がいれば良いなと思います。


まさに、VARKのミッションである「新しい活躍の場所を創り、新しい人生を届ける」の体現となりますね。

生まれてきたからには世界をより良くしよう、という思いはずっと持っています。活躍する人が増えるような場を作ることが、今の自分にできる"世界をより良くする方法"かなと思っています。


これから起業する方、起業されている方へ、持つべき「起業家の志」とはどんなものだと思いますか。

偉そうなことを言える立場ではないのですが...、好きなこと・得意なことをやってください。そして、嫌いなこと・苦手なことは絶対しないでください、でしょうか。

起業家には、資金集めと仲間集めの戦いが待っています。スタート地点は、まずは自分一人で何とかするところから始まるので、好きなこと、得意なことでなければ難しいと思います。

苦手なことは、スペシャリストに任せた方がいいものが出来上がります。VARKでは、一番大事な「開発」を、自分より間違いなく優秀だと思うメンバーにジョインしてもらって任せました。営業やバックオフィス系は、私自身がその分野の未経験者なので、どんなスキル・経験がある人がマッチするのか、採用ミスも重ねながら今の組織ができています。

不得手なことをやるのは時間の無駄。不得手なことに四苦八苦する時間があるくらいなら、新しい調達方法を考えた方がいいし、一人でも多くの投資家に会いに行った方がいいと思います。