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2030年に必要とされる「戦略的学習能力」 教育系スタートアップに学ぶ、「学び続ける人材」の育て方
2030年に必要とされる「戦略的学習能力」 教育系スタートアップに学ぶ、「学び続ける人材」の育て方

ジャフコでは、起業家や人事の皆様が悩みながらも挑戦し続けている「人と組織」に関するテーマについて、成長中のスタートアップの方々をお招きして定期的なセミナーを開催しています。第2回のテーマは「学び続ける組織・人材の育て方」。教育系スタートアップ2社からゲストをお迎えして実施しました。

【登壇者プロフィール】(敬称略)

<ゲスト>
ライフイズテック株式会社 取締役副社長COO 小森 勇太 (こもり・ゆうた)
人材コンサルティング会社で「エンターテイメント×採用」新サービス開発に取り組む。独立後、株式会社SCRAPで『リアル脱出ゲーム』のコンテンツディレクターを経験し、ライフイズテック株式会社を共同創業。サービス、マーケティング、組織の最高執行責任者。一般財団法人生涯学習開発財団認定ワークショップデザイナー。

スタディプラス株式会社 取締役CFO 中島 花絵 (なかじま・はなえ)
あずさ監査法人にて上場企業及びJ-SOX監査を担当。(株)カカクコムにて経営企画室長として、IR、経理財務、コーポレートガバナンスを担当。2018年にスタディプラス株式会社に入社し、現在はコーポレート全体を管掌。

<ファシリテーター>
ジャフコグループ株式会社 金沢 慎太郎(かなざわ・しんたろう)
株式会社ワークスアプリケーションズに入社。2017年にエッグフォワードに参画。執行役員に就任し、多数企業における組織課題・人材課題に取り組んできた。現在はジャフコにて、投資先のバリューアップを行うべく、スタートアップの組織・人材開発支援に従事。

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「学ぶ」ことの意義とは何か

金沢 小森さんが2010年に共同創業したライフイズテックは、中高生向けにIT・プログラミング教育を提供している企業。『Life is Tech! キャンプ』『Life is Tech! スクール』の運営やオンライン教材、官公庁・自治体・企業との連携等を通じ、創業からのべ5万人にサービスを提供しています。

中島さんが取締役CFOを務めるスタディプラスは、2010年に創業した、学習管理プラットフォーム『Studyplus』を運営する企業。学習記録の可視化や勉強仲間作りができるアプリで、累計会員数500万人超、受験生である高校3年生の3人に1人が利用しています。

オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授は、2030年に仕事で最も必要とされるスキルを「戦略的学習力(自ら学び続ける能力)」と定義しました。「学び」を主軸に事業を展開する両社のお二人は、自社サービスにどのような思想を持ち、「学ぶ」ことの意義をどう捉えていらっしゃいますか。

失敗学02_3 (1).jpg

出典:The Future Skills :Emploument in 2030
https://futureskills.pearson.com/


小森 
ライフイズテックが目指すのは「中高生の可能性の最大化」で、テクノロジーはその手段。従来の学校教育では、コミュニケーション力・記憶力・運動神経等わかりやすい能力にスポットライトが当たりがちですが、コミュニケーション力は低いけれどアプリや映像や音楽は作れるというような、優れたクリエイティビティを秘めた子どもが実はたくさんいます。

そういう子がLife is Tech!のキャンプに参加すると、仲間との出会いをきっかけに変化したり、テクノロジーを知ることで新たな世界を見出したりして、みるみるうちに輝いていく。「学び」を通じて、100人いれば100通りの可能性やクリエイティビティを引き出していくことが、弊社のサービスの思想です。


中島 スタディプラスのビジョンは「学ぶ人を主人公にする」こと。教える側が主人公になるのではなく、どんな先生に教わり、どんな場所で、誰と何を学ぶか、すべて自分で設計していく世界を創りたいと考えています。

『Studyplus』では、同じ目標を持つ友達を作り、その子がどんな勉強をしているかを知ることができます。田舎の学校の生徒が都会の生徒と繋がることで視野が広がり、それまで考えてもいなかった目標を新たに得ることもあります。また、自分の学習記録は財産として残り続けるため、モチベーションも維持できます。学びについて能動的に考えて自己実現していく、そのきっかけを私たちは提供しています。


金沢 
では、そのサービスの担い手である自社の社員に対しては、どんな「学び」を求めているのでしょうか。


小森 サービスを10年やっていると成功体験も多くありますが、成功体験に縛られず、変化に対して常に思考し続けることを重要視しています。弊社の場合、オフラインのキャンプやスクールを運営しているので、コロナの影響はかなり受けました。でもそれが今までの当たり前を取り払うきっかけになったという側面もあります。そうした外的要因がなくても、「変化しないといけない」という意識を常に持つ必要があると感じています。


中島 弊社のバリューのひとつに「Dive to Learn -学習者のためにやろう-」というものがあります。これは「学ぶ人(ユーザー)にDiveしよう」という意味に加え、「私たちも学ぶ人になろう」という意味もある言葉。「自分も学ばなきゃ」という想いは社員のみんなのベースにあると思います。

その上で、成功体験を積んでもらうことも意識しています。「学んだ結果、何かが起こる」という実体験があるからこそ、人は学びたいと思うものなので。その一環で、組織を細分化して各部長に権限を持たせるという取り組みを行いました。「自分次第で組織を変えられる」と認識し、実際に成功体験を積める環境を作ったことで、一人ひとりが何をすべきか主体的に考えるようになったと思います。


学び続ける人の特徴と、学び続けるために必要な要素

金沢 環境変化の激しい現代では、次々と出現するイシューに対して戦略的に学び続けることが必要です。自社サービスのユーザーや社員の「学び」を間近で見ているお二人に、学び続ける人の特徴を聞きたいと思います。まず中島さんからお伺いできますか。


中島 自分が何のために学ぶのか、目標を認識できている人。つまり、常に状況を客観的に見ることができていて、変化に気づいて対応しようと思える人です。それができるのはどんな人かというと、自分で問題を解決してやるという責任感のある人。責任感があると、実際に問題を解決する力や立場が自分にあるかどうかを客観的に認識し、ないのであれば解決できるように学んでいくというステップを踏めるからです。

目標に向かって学んでいくためには、その目標やロールモデルを言語化できなければなりません。弊社の『Studyplus for School』という塾向けの学習管理プラットフォームは、目標設定や進捗管理を先生の代わりに行い、メンターとして生徒に伴走してあげるサービス。そうした伴走してくれるメンターや仲間を見つけることも、学び続けるためには重要だと思います。


小森 中島さんがおっしゃった「変化に気づく」はまさにその通り。加えて、内省力というか思考量の多さみたいなものも、学び続ける人に共通していると感じます。思考量が多くないと変化が景色のように流れていってしまうので。

弊社には大学生のメンタースタッフがいて、中高生に学び体験をどう届けるか等を考えてもらうのですが、その際もマニュアル化するのではなく自由に思考させるようにしています。ケアレスミスが起きた時も、なぜミスをしたのかを一緒に深掘りして、自分の思考の優先順位を自覚してもらったり。一方で、先ほどの中島さんの「伴走」のお話に近いですが、自分の成し遂げたいアウトプットが明確にある人は、そうした問いかけをしなくても自分で考えられることが多いです。

子どもたちの中には、クイズ番組を見ていて面白そうなクイズを見つけたら、自分ですぐにアプリを実装するといった自己変革力の強い子がいます。そういう子を見ていると、

【①自己肯定感を高める(コミュニティを作る等)】

【②有能感を高める(スキルを身につける等)】

【③社会からフィードバックを得る】

【④目標を形にする】

という4ステップをうまく回すことができていると感じます。

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「学ぶことは楽しい」という大前提を忘れない

金沢 参加者から、「学び続ける人を採用面接時に見極める秘訣は?」という質問がありました。それに対して小森さんからは「【①自己肯定感を高める】や【③社会からフィードバックを得る】のステップを踏む力は、社会人が後から身につけるにはハードルが高いので、素養として持っているかどうかを見極めます」、中島さんからは「弊社に対する質問を沢山してもらい、どんなことに興味があるか、そもそも好奇心はあるか判断します」と回答がありました。

最後にお二人から、起業家の皆様へメッセージをいただけますか。


小森 組織運営はとても難しいもの。従来の常識に固執せず、その時その時の価値基準をアップデートしていくことが、学び続ける組織を作る上で必要なことだと思います。


中島 「学ぶことは楽しい」という大前提を忘れないでください。学んで、何かを変えられることの楽しさを一人ひとりに知ってもらうことができれば、より主体的に動ける組織になるのではないでしょうか。


金沢 今回は「学び続ける組織・人材の育て方」というテーマでした。今後も起業家や人事の皆様が悩みながらも挑戦し続けている「人と組織」に関するテーマについて、成長中のスタートアップの方々をお招きして定期的なセミナーを開催していきますのでよろしくお願いいたします。