はじめまして。& JAFCO POST編集部の清田と申します。
突然ですが、スタートアップにおける「失敗」とは何でしょうか?
採用した人が辞めてしまう、事業が収益化しない、キャッシュフローが回らない、資金調達ができない...様々な「失敗」のイメージがあるかもしれません。しかし、私たちは、起業家にとって必ずしも「失敗」が悪いものではないと考えています。
ジャフコは、45年を超える歴史のあるVCであり、累計4,000社以上へ投資を実行し、うち1,008社のIPOを経験してきました。その過程において、多くのスタートアップと出会い、たくさんの成功・失敗の事例を起業家と共有してきました。
そこで、ビジネスの最前線でチャレンジを続ける起業家やこれから起業を志す読者の皆様に対し、先輩起業家の失敗事例やそれにまつわる学びを提供することが、起業家がチャレンジをし続けるための一助となるのではと考え、この度「起業家の失敗学」という連載をスタートさせることとなりました。
その「失敗」がなぜ起こってしまったのか。起業家の失敗の原因を分析し、科学し、読者の皆様へ共有することで、同じ失敗を回避しながらチャレンジしていただけるようにするのが目的です。
そのために、この連載では、起業家教育全米No.1の超有名大学・バブソン大学と、この大学で「失敗学」の講義を持つ山川恭弘准教授という強力なパートナーにご協力いただけることになりました。ジャフコの実例やノウハウだけではなく、アカデミックな視点を取り入れて、起業家の失敗を科学していきたいと思います。
今回は、初回ということで、この連載に対する想いや、パートナーのご紹介、そして今後どんなコンテンツを展開していく予定かをお伝えさせていただきます。
「失敗は手段」、スタートアップのチャレンジに失敗はつきもの
スタートアップは、未知の領域へのチャレンジの連続であり、不確定要素の塊です。当然、未知へのチャレンジは、試行錯誤の連続であり、成功より失敗の回数の方が多いもの。
日本では、よくメディアで「成功した起業家」がフィーチャーされます。しかし、「失敗」にフォーカスした内容はあまり見受けられないのではないでしょうか。
失敗がすべて悪いことのように捉えられる日本の商習慣もあるのかもしれません。しかし、どんな起業家でも、成功の裏にはたくさんの失敗があります。成功している起業家は、失敗して終わりにするのではなく、失敗の原因を分析し、そこから多くの「学び」を得て同じ過ちを繰り返さない。ダメだった部分を改善しながらPDCAを回し、「成功するまでやり続けている」方なのです。
「失敗」の多くは、あくまで「未知の領域へのチャレンジ」に対して不確実な要素を排除するための「手段」。読者の皆様には「失敗」をしても最小限で済み、それを活かせるような情報を知っていただけるよう、この連載では先輩起業家の失敗事例やノウハウを読者の皆様に還元できたらと考えています。
トヨタ自動車・豊田章男社長も卒業した起業家大学・バブソン大学と山川准教授が協力
さて、この連載「起業家の失敗学」にご協力いただけることになりました強力なパートナー、アメリカの起業家教育分野の超有名大学・バブソン大学と、この大学で「失敗学」の講義を持つ山川恭弘准教授についてもご紹介させてください。
バブソン大学は、U.S.News & World Reportの全米ビジネススクールランキング・アントレプレナーシップ部門で27年間連続トップを獲得する超有名大学。学部1年生には起業を必修化するほどの実践タイプの大学で、トヨタ自動車の豊田章男社長やイオンの岡田元也社長も修了生です。
バブソン大学オフィシャルサイト(英語) https://www.babson.edu/
バブソン大学MBA日本人向けサイト https://www.babson-japan-unofficial.com/
バブソン大学で、すべての起業に関する学びの起点となるのが「自分が何をすべきか、何ができるのか」よりもむしろ、「DESIRE:私は誰か?何をしたいのか?」。起業にあたって、まずは自己理解をして「自分は何をしたいのか」「自分はどのようなインパクトをもたらしたいのか」が分かりさえすれば、あとは一緒になる仲間を募り、ちょっとした発射計画とともに行動を起こすことが重要であると推奨しています。起業家的考えの三大原則「とにかく行動、失敗は必然、人を巻き込め」という考え方です。
また、バブソン大学では「クリアクション」という起業家的思考を大事にしています。クリアクションとは、未知の状況に直面した時に起業家が用いる思考法のことです。成功確率を上げるためには一歩踏み出し、未知(Uncertainty)を既知(Risk)に変えていく試みが重要。許容可能な損失を把握した上で、手元にあるリソースのみを利用してまずは行動を起こそうという考え方です。
今回、バブソン大学の山川准教授にもこの連載のお力添えをいただくことになりました。山川准教授は、バブソン大学で「失敗学」の講義をもつ著名な先生で、まさに「起業家の失敗」の専門家。その知見をお借りし、読者の皆様への有益な情報を一緒に発信していきたいと考えております。
日本ではまだまだ失敗をタブー視する傾向があります。そして、現代は「VUCAH:Volatility(不安定), Uncertainty(不確実), Complexity(複雑), Ambiguity(曖昧) and Hyper-Connectivity(ハイパーコネクティビティ)」と呼ばれ、企業の大小を問わず未知へのチャレンジが必要になる時代です。失敗は成功のもと、しかしただ失敗すれば良いという訳ではありません。いかに成功に繋がる失敗を重ねていけるか、学びに焦点をあて、許容できる範囲の見極めが大事になります。極端に言うと、「Failure is Good(失敗は良いことだ)」というのが山川准教授の考え。それはなぜ?どのようにして?を問いとして、山川准教授の知見もお借りしながら、アカデミックな分析や理論もふまえてチャレンジする起業家の支援になる情報として発信させていただきます。
山川 恭弘 (やまかわ やすひろ)バブソン大学アントレプレナーシップ准教授。東京大学教授。起業道、失敗学、経営戦略、及び国際ビジネスの分野で教鞭をとる。ピーター・ドラッカー経営大学院にて経営学修士課程修了(MBA)。テキサス州立大学ダラス校にて国際経営学博士号取得(PhD)。10年間エネルギー業界にて新規事業開発やスタートアップ設立の経験を持つ。執筆活動はアントレプレナーシップに関する多数の学術論文にわたる。日本での著書は「全米ナンバーワンビジネススクールで教える起業家の思考と実践術:あなたも世界を変える起業家になる」など。CIC Japan プレジデント / ベンチャーカフェ東京代表理事他。
ジャフコの実例×バブソン大学&山川准教授の知見による魅力的な記事の創出
今後の「起業家の失敗学」に関しては、
・様々なスタートアップの失敗とそこから得たファインディングスの事例
・スタートアップに限らず、歴史や大企業等の失敗事例から学べる普遍的な要素
などを中心に、ジャフコの事例やノウハウだけでなく、バブソン大学や山川准教授のアカデミックな知見を合わせ、起業家にとってより価値あるコンテンツとして発信していきたいと考えております。
次回の「起業家の失敗学」は「思い込みの罠〜「先行優位性」編〜」として2020年12月下旬に掲載予定です。未知へのチャレンジに対して行動して失敗することは当たり前。そこから何を学び、次にどう活かすかという視点を発信していきますのでご期待ください。
ジャフコ グループ株式会社 清田 怜
2014年入社。東京本社投資部配属。入社から一貫してベンチャー投資を担当。主たる業務として、投資候補先の発掘、投資実行、投資先の成長支援を行う。投資先企業に対し、ファイナンス戦略の立案、収益計画作成、営業、人材採用、管理部門構築など、幅広い業務支援を行っている。投資担当先はミライセンス、Holmes、QuantumCore、Gaudiy等。